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(2)スターリング機関の特徴と適合性
本研究開発「大深度長期高効率海中動力源システムの開発」では、試作及び試験・評価を実施する高圧燃焼・排ガス液化排出型外燃式海中動力源システムの機関本体として、スターリングエンジンを使用する。
ここでは、同エンジンの一般的な特徴及び海中動力源としての適用性について述べる。
a.スターリングエンジンの作動原理
本研究開発にて開発する海中動力源システムの機関本体として使用するスターリングエンジンについて、その作動原理について説明する。
スターリングエンジンは、熱機関において往復動型外燃機関として位置付けられ、さらには同じ作動ガスを繰り返し使用する密封サイクルとして分類される。
スターリングエンジンの種々の形式の中で最も基本となるのがディスプレーサ型と呼ばれるものである。ディスプレーサ型スターリングエンジンの機構例を図3.1.1-1に、その模式図を図3.1.1-2に示す。
スターリングエンジンでは、その作動ガスは作動空間部に密封されており、この状態でヒータで加熱され、クーラで冷却される。ディスプレーサ型スターリングエンジンの作動原理及び熱力学的サイクル図を図3.1.1-3に示す。
ここで、適当な容積変化が得られるように機械的に結合された2つのピストンを、図3.1.1-3(a)に示すように一定の位相差を保ちながら作動させると、作動空間内の作動ガスは連続的な加熱・冷却と共に高温室と低温室の間の移動を繰り返し、図3.1.2-1(b)のP-V線図に示すような、等温圧縮一等容加熱-等温膨脹-等容冷却の4つの工程からなるスターリングサイクルと呼ばれる熱力学的サイクルを構成する。この際、P-V線図の面積に等しい仕事がこのサイクルで発生し、これを軸出力により系外へ取り出すのがスターリングエンジンの基本原理である。
なお、スターリングエンジンには、熱効率向上のために再生器が設けられており、作動ガスが高温室から低温室へ移動する際(等容冷却時)には、系外へ放出されるべき熱を一時蓄熱し、逆に低温空間から高温空間へ移動する際(等容加熱時)には、その蓄えられた熱が再生器から作動ガスに再び与えられる。
こうした原理によって作動するスターリングエンジンの理論効率ηTは、前述の再生器の温度効率を100%とすると、次式で与えられる。
ηT=1-(TC/TH)(TH:高温熱源温度、TH:低温熱源温度)
即ち、スターリングエンジンの理論効率は、カルノーサイクルのそれと同等となり、熱機関のとして高レベルの熱効率を達成しうる。
これが、スターリングエンジンの魅力ある特徴の一つである。

 

 

 

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